金曜日は大学院演習。

今回はニコラ・ブリオーの「Relational Art」という概念を軸としつつ、具体的な作品を通して、ブリオーの理論を批判的に考察するもの。

とりあえずの感想としては、発表者も指摘していたが、ギイ・ドゥボールの用いたままでの「スペクタクル」の概念では若干今回の発表にはそぐわない部分が多い。例えば、ダグラス・クリンプの美術館論にもスペクタクルの概念については言及があったはずで、ドゥボール当時のものと今のものとのズレ、ブリオーの理論と実際の作品のズレを批判する場合には、スペクタクル概念のズレをもう少しはっきりおさえる必要があるのではないか。

それとティラヴァーニャのカレーを用いたパフォーマンスについての質問は、少し言葉が足りませんでした。

質問の意図としては、カレーをギャラリーで振舞うという行為に関してもっと読み取るべきものがあるのではないだろうか、ということ。

<美術館=ホワイトキューブ>の中でそうしたパフォーマンスをしてもアートになるということだけではなく、ティラヴァーニャの場合、むしろ既存の制度的な枠組み(ホワイトキューブ=権威としての枠組み)を破壊するための、その制度の内部に入り込んだしたたかな戦略ではないか、ということである。
外部からではなく、内部から制度の破壊を目指す、そんなしなやかなスタンスがティラヴァーニャの作品には見られるのではないかということ。

カレーに関しては、先生が指摘していた通りだと思います。
展覧会に来た観客とアーティストが交流をするためだけなら、庭でバーベキューをしてもいいはず。そこであえてホワイトキューブの中で「アジア的」ともいえるカレーを振舞うという行為は、一体何であるのか。それこそ、すでに述べたように、制度を逆手にとったあり方であり、そこからブリオーを批判することができるのではないだろうか。

それと、個人的には提示された具体例が論じられる位相が微妙にずれていたような気もした。

と、感想。