「あの橋を渡るまでは、兄弟でした」

映画『ゆれる』の宣伝文句である。

この映画は、キャッチフレーズにもあるように、香川照之オダギリジョーの兄弟の関係を中心にして進む。

都会に出て行った弟オダギリと田舎に残り家業を継いだ兄である香川、そしてその店を手伝う幼馴染の真木よう子。兄弟二人は現状に対して、あきらめを持ちつつもある程度納得して生活している。デカダン的な雰囲気が、光の使い方もありいっそう強く感じられる。

しかし、真木は自身の今の状況に耐えることができない。過去に関係のあったオダギリが都会に出るときに共にいくことができず、香川が営む店を手伝っている。しかし、オダギリの帰省により現状から抜け出そうともがく=田舎と都会のあいだを揺れ動くことになる。

そうした状況下で、渓谷へと三人で出かけ、三者三様の渡り方をするのだが、ここから物語は大きく転換し、オダギリと香川のそれまでの関係が壊れていく。

しっかりものの兄とわがままな弟という一見ありがちな関係が、法廷での審問や面会を重ねることで次第に崩れていく。いつしか、弟が兄を支えるようになるのだが、そこで話は終わらない。今度は、お互いがお互いにもつやましさをぶつけ合うことで、兄弟の関係もゆれうごいていく。

少しずつ少しずつ中心となる話題から離れていくことによって、オダギリと香川の心的な揺れ幅の大きさを明らかにしていく。

ストーリー自体は良くできていると思うし、この二人の視線を示すリヴァースショットや、ガラスに映った眼の表現など見るところは多いと思う。

企画には是枝裕和も参加し、テレビマンユニオンの名前もある。配給会社もシネカノンなので、『誰も知らない』とスタッフも重なるのだろうか。

刑事役はピエール瀧