無常 [DVD]

無常 [DVD]

実相寺昭雄『無常』を見る。

なかなか嫁ぐことに積極的でない姉と仏像の研究をしている弟が、ふとしたことをきっかけとして関係を持つようになってしまう。

周囲の人間を巻き込みながら逢瀬を重ねていくのだが、それは結局、賽の河原で石を積む作業に等しく、何かが積み重なっていく行為ではない。そもそも弟は姉以外とも、積み重ねる、という行為や考えそのものを否定するような関係を続けていく。それは突き詰めていけば、仏や救済といった仏教的なものへの否定にも向かうのだろう。無常である。

カメラワークとしては上下からのアングル殻撮影されたものも多く、垂直の運動性が比較的強く感じられた。それは階段のシーンや顔の撮影に顕著であったように思われる。ゴダールなどヌーヴェルヴァーグからの影響も大きいだろう。

この映画では姉と弟の行為を覗く行為も多い。そのためカメラの視点もそういった視点になることが多々ある。このようなシーンを浴びるように見ると、嫌でもカメラの視点とは何か、その覗視的なあり方というものが頭に浮かぶ。

上映時間は2時間半弱。中盤はすんなり見ることができるのだが、序盤の姉と弟が関係を持つ寸前の能面をかぶりお互いが戯れるシーンや、後半の弟と祖母のやり取りはやや冗長で唐突な印象も受ける。



修論の具体例として使えるかはまだ分からないが、オプ・アートと視覚の関係を調べておくこと。錯視と斜視について。